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詩集『こころ色』より

 

 

《こころ色》

 

 

こころには色がある

そのとき

そのとき

色がある

 

濃かったり

淡かったり

かがやいていたり

くすんでいたり

 

たくさん たくさん

色がある

 

僕はそれを感じたい

自分のこころのその色を

 

 

 

 

 

《感性を…》

 

 

ひとは様々な表情を持つ

 

こうしてぼんやり海を眺めていると

海にも様々な表情があるようだ

 

僕は世界中にある様々なものの

様々な表情を

感じ取れるようになりたい

 

そうすれば

もっともっと感動の涙を

流せるようになれるだろう

 

 

 

 

 

《真実》

 

 

ガラスのビンを通して見る向こう側は

同じ景色のはずなのに

ずいぶん違って見える

 

僕が見ているこの世界は

ホントに存在してますか?

 

僕が見ているあなたは

ホントにあなたですか?

 

ガラスのビンを覗いている僕は

ホントに僕自身ですか?

 

ときどき心配になります

 

 

 

 

 

《蜻蛉(かげろう)》

 

 

いろいろなことがあるたび

うれしかったり

悲しかったり

嫉妬したり

涙をこらえたり

 

そのなかで

優しさとか

厳しさとか

知ってゆくんだね

 

でも

その一瞬一瞬が

ただの思い出になってしまって

心のなかで鈍い輝きを放っているよ

 

あんなに感動したのに

あんなに大切だったのに

あんなに深く傷ついたのに

ときの流れが

僕の時間を飲み込んでいってしまうんだ

 

前を向いて歩いてゆくよ

歩いてゆくけど

たまには戻りたい瞬間もあったから

少し寂しいんだ

 

でも

一番嘆くべきは

寂しいと思った気持ちまで

忘れてしまうことなんだ

 

せめて

ゆっくり ゆっくり

自分の時間を踏みしめながら

歩いてゆきたいもんだよ

 

 

 


 

《ホントのキモチ》

 

 

「アリガトウ」って言葉は

嘘でも言えるけど

 

「アリガトウ」って気持ちには

嘘はつけないよ

 

 

 

 

 

《裸の心に》

 

 

心を裸にしたい

 

心を裸にしたい

 

自分勝手とは違う

自由気ままな心になりたい

 

何も隠すことのない

すべてを無にできるくらいの

裸の心になりたい

 

それを侵そうとする人でさえ

バカバカしく思えるほどの

そんな開け広げの心でいられるように

心を裸にしたい

 

自分のなかに

邪魔するものが多くても

厚着になんてならぬよう

 

心を裸にしたい

 

 

 

 

《原点》

 

 

海の青

その青に生命を感じる

 

海の青

手ですくって見れば

「mushoku 透明」

 

水から生まれる

すべての性命は

「mushoku 透明」

 

なのに

たくさん色がついて見える

ヒト ヒト ヒト ヒト ヒト ヒト ヒト…

 

たとえ色の染まっても

透明な自分を忘れたくない

 

「mushoku 透明」

 

それが原点

 

 

 

 

 

《涙を流せばいいじゃないか》

 

 

誰の心にも

せき止めた思いがあるはず

 

その思いがあふれ出して

涙になる

 

いっぱい いっぱい

 

涙を流せばいい

 

 

 

 

 

《ここにいますよ》

 

 

夕暮れ近く

 

路地に

少し涼やかな風が吹く

 

季節の移ろいを運ぶ風

心がしんみりしてくる

 

取り残されたと泣く

風鈴の音に

 

誰か気づいてくださいよ

僕はここにいますから

 

ふと言いたくなった

 

 

 

 

《解放》

 

 

僕が僕として生きること

それはどういうことか

 

無意識のうち

僕のすべてが

何かの影響(洗脳)を

受けているんだろう

 

日々の生活のなか

あたりまえ

常識

そういう固定観念に支配され

知らず知らずのうち

心まで縛りつけられていたようさ

 

本当の僕は

何が好きで

何が嫌いで

何に喜び

何に傷つき

何に憂い

何に感動するのか

ずっと見過ごしてきたんだ

 

僕が僕として生きること

ただそれが知りたい

 

 

 

 

 

《日々の生活》

 

 

グルグル グルグル

 

時間が回る

 

 

どこかに吸い込まれてゆきそうで

懸命にしがみついている

 

いったい何にしがみついているのか

 

それが大きな問題だ

 

 

 

 

 

《松籟》

 

 

目を閉じて

自分の存在を消してみる

風が吹き抜けてゆくたび

森はざわめく

 

こうしてじっと耳を澄ませていると

松のささやきが聞こえてくる

時間を忘れて

ただその声に耳を傾ける

 

体にのしかかっていた

何か重い力がすっと抜けていって

かわりに真っ白な力が湧きあがる

 

風が吹き抜けてゆくたび

森はざわめく

目を閉じて

自分の存在を消してみる

 

そうしてほんのひととき

森とひとつになった

 

 

《今という瞬間》

 

 

風が通り抜けてゆく

 

草たちがざわめいている

 

海面にさざめく波を

薄黄金色に染めながら

どんどん沈んでゆく太陽

 

 

今という瞬間は二度と戻らない

 

そうぼんやりと思いながら

 

草たちのざわめきのなか

通り抜けてゆく風と

絶え間なく打ち寄せる波音とに

 

時間を忘れていた

 

 

 

 

 

《不思議な哀傷》

 

 

知らぬ土地

 

電車に揺られ

 

窓越しにぼんやり外を見た

 

一台の霊柩車が目にはいる

 

ああ、だれか死んだのか

知らぬ土地の知らぬ人

悲しくなんてなるはずがない

 

けれど

いつもどこかで

人が生れて人が死ぬ

 

そう考えてみたら

不思議な哀傷がわいてきた

 

 

 

 

 

《子どもの手、大人の手》

 

 

小さな漁村の

小さな旅館の食堂で

 

隣り合わせた職人風の男が

焼酎をぐいぐい飲みながらこう言った

 

 

「子どもの手は小さいけれど、

つかめるものがいっぱいある。

大人の手は大きいけれど、

つかめるものがどんどん少なくなる。

だから兄ちゃん頑張れよ。」

 

 

その人がなぜそんなことを言ったのか

よくわからなかったけど

 

自分で自分の可能性を

小さく少なくするなよ

 

そう応援してくれたような気がしたんだ

 

 

 

 

 

《無意識という怠慢》

 

 

知らぬ土地の

名も知らぬ橋

 

人も車も遠慮なしに

ドカドカ ドカドカ越えてゆく

 

そうなんだ

この橋はここにあるのがあたりまえで

人々にとって

無意識の存在であることも

またあたりまえなんだ

 

僕にも

そういうあたりまえだと

見過ごしていることが

たくさんあるんだろう

 

 

 

 

 

《車窓から》

 

 

流れゆく景色を

車窓から眺める

 

過ぎ去った過去

頭のなかをめぐる

 

いま思えば

恥ずかしいくらい一所懸命

ひとを愛した頃の記憶がよみがえる

 

いま思えば

虚しいくらい

自己主張をしていた頃の記憶がよみがえる

 

景色も人生も

過ぎ去ってしまえば

すべてが一瞬の出来事

 

でも

心に残したい

いつまでも輝かせておきたい

そういう想いを

ひとつでも多く見つけることが

僕の生きている証なのかもしれない

 

 

 

 

 

《涙すること》

 

 

涙が止まらないのは

心が

なにかでいっぱいになったから

 

 

透きとおった清いながれが

体中をめぐって

あふれてきたんだ

 

 

こうして

自分自身を浄化させて

僕は僕であることを

 

確認しているんだろう

 

 

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